館長からのメッセージ

行動する水族館

水族館は水の惑星を救えるか
水族館の社会資本としての今日の意義は何でしょうか?動物園や水族館は、人々の珍奇な動物を間近に見たいという願望から誕生したものです。水族館は特にヨーロッパでは動物園の園内施設として水生生物の蒐集を受け持っていました。
 今日、独立した水族館が世界的に増加しています。世界にはいったいどれくらいの水族館があるのでしょうか。400館以上にもなります。ヨーロッパ(中近東を含め)163,南米26,カリブ海諸国9,北アメリカ56,南アフリカ4,豪州17,中国57,東南アジア18,日本67,計417館(2010,国際水族館フォーラム)です。
 近年、水の惑星の沿岸に水族館が増加しつつあります。水族館は、水中の生物保全に救急メッセージを発信する強力なメッセンジャーとなりえます。水族館は水の惑星を救えるでしょうか。イエス、ウイーキャン!

サインボード 「行動する水族館」 サインボード 「行動する水族館」

行動する水族館をめざして
地球規模の環境問題を水族館でどう扱うかは、次世代水族館の最重要の課題となるでしょう。水族館では、公立、私立を問わず環境学習や自然保護についての機能が強化されるでしょう。野生動物を擬人化したショーは、大衆から飽きられることは明らかです。環境教育や稀少動物の保全は、単なるポーズでなく、広範な自然教育プログラムを実践することによって人々に評価されるでしょう。これによって人々の支持を得ることが、施設の存立意義にとって必要となります。希少動物の保全に対して動物園や水族館が大きな役割を担うのはよいことにはちがいありません。
 しかし、動物園は、環境教育の態勢を整える間も無く、希少哺乳動物の種の保全に忙殺されているように見えます。動物園は子供達が「自然への扉」をたたく場としての態勢をさらに整える必要があります。野生生物の生息環境悪化の背景では、動物園は希少動物個体群の保持の場となり、野生復帰もままならないというジレンマに陥りそうです。
 アクアマリンふくしまは、10周年を期して、「行動する水族館」のサインボードをかかげました。英語はInspiringとしました。それは、人々を鼓舞し勇気づける施設でありたいとの願いからです。昨年は、相次いで世界初のブレーキングニュースを発信することができました。
 一つは、アフリカでもインドネシアでも未発見だったシーラカンスの稚魚を、インドネシアスラウエシ島のマナドで10月6日に撮影に成功したことでした。
 もう一つは、長年挑戦してきたバショウカジキの若魚2尾を75日間にわたって飼育展示に成功したことです。こうした成果は、フィールドでの活動を重視するアクアマリンふくしまの「行動力」の賜です。

シーラカンス(左)とバショウカジキ(右)の稚魚 シーラカンス(左)とバショウカジキ(右)の稚魚

動物園から分化した水族館ですが、今日、動物園と水族館との垣根を意識的に取り払うことも「行動する水族館」の目標となりうるでしょう。すでに、ニューヨーク動物園・水族館は90年代に感情的な動物愛護団体の反動物園運動に反論して、ブルックリンの動物園にもコニーアイランドの水族館にも「保全センター」という正式名称を冠しています。アクアマリンふくしまも、当初から計画していた保全センターConservation for Aqua Life、通称CALを建設し、阿武隈稀少生物保全の役割を担っています。次世代動物園、水族館には新しい名称が必要となるでしょう。例えば、動物園はもっと人が消費する家畜や畜産の紹介に力をいれても良いでしょう。水族館はうおのぞき子ども漁業博物館のように、水産の振興を支援すべきでしょう。動物園と水族館は、持続可能な自然の利用に共通項を見いだせるでしょう。そうすれば、保全、生物多様性、持続可能性、自然との共生などが施設名になりうるでしょう。
さあ、名前は何とつけましょうか。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝