館長からのメッセージ

水族館のSustainability

私達は平成22年2月3日、ここ、福島県いわき市小名浜の黒潮と親潮のつくる「潮目の海」を前にして、「水族館のSustainability」と題して、水族館の社会的使命と運営のありかたを新しい時代に適合発展させるためのフォーラムを開催した。これは、フォーラムの意見集約をするためにまとめた声明文の草稿である。参加者の推敲を経て、声明文の成案となる。皆様のご批判をいただければ幸甚である。
 フォーラムは、東海大学名誉教授鈴木克美氏の基調講演にはじまり、セッション1のテーマは「水族館と環境メッセージ」では5名が講演した。セッション2のテーマは「展示と教育普及」で、4名が講演した。それぞれのスピーカーが、多面的な論議を展開した。以下に、それらを集約して声明文とした。
水族館のサステイナビリテイ・環境教育
 ”生きた博物館”としての水族館は、時代とともにその役割を変えてきました。水族館の現代的な役割は、希少種の保全と環境教育の場へと変化し、さらに人々の心の癒しのさえ役割になりつつあります。
 私達は過剰な開発によって、身近な自然を破壊し、子供達から自然に接する機会を奪ってきました。地球規模の環境問題について、「不都合な真実」(※)を人々に伝える機能が重要になりました。このような背景をふまえて、地域の水族館は、館内はもとより、地域の自然を活用した広範な活動を通して、環境教育を質、量ともに充実させ、「命の教育」の場としての責務を果たしていく必要があります。

水族館のサステイナビリテイ・経営戦略
 我が国は、世界の漁場を開拓した歴史を持ち、多くの水族館を持つ世界有数の水族館国でもあります。水族館は、地球の70%を占める水域の環境を対象にして、学術研究を通じて地域の持続的な水産振興に貢献することができます。水族館はまた、水産物の消費者でもある観覧者に水産情報を提供することができます。また、「サステイナビリテイ」を共通テーマとして世界の水族館のネットワークに積極的に参画して、グローバリゼーションに対応することが可能です。これらの活動は、地域のブランド力・観光力の向上に貢献することでもあり、それは水族館の健全な持続的な経営に結びつきます。

最後に、この水族館フォーラムは、毎年、発信すべき共通の環境メッセージについて話し合う場として持続的な機関といたしたい。

平成22年2月3日
アクアマリンふくしま


(※)前アメリカ副大統領ゴア氏のInconvenient Truthより引用。

築地の様子。 築地の様子。