館長からのメッセージ

7周年を迎えたアクアマリンふくしま 世界スタンダード水族館をめざして

野生動物を展示する動物園や水族館は、見せ物小屋・メナジェリーの時代を経て、科学系の「生きた博物館」、さらに「生態系モデル」展示へと変遷している。

全館ガラスで覆われたアクアマリンふくしまのデザインは植物の繁茂する「生態系モデル」をつくるためのものだ。アクアマリンふくしまは、2000年7月15日に、「次世代水族館」と銘打って小名浜港第二埠頭に誕生した。筆者は構想・計画段階から携わった。

46億年前の地球創世と生物進化から始まり、あぶくまの渓流から黒潮と親潮の出会う潮目の海へと続く展示のシナリオは分かりやすく、また、海洋文化の視点はユニークである。キャッチフレーズは「海を通して人と地球の未来を考える」である。漁港と工業港、煙を上げる工場、いわば動脈産業のまっただ中にある「静脈産業」である。

アクアマリンふくしまの外観 アクアマリンふくしまの外観

アクアマリンふくしまの壊れやすい水の惑星のイメージは、人類に立ちはだかる環境の問題をテーマに、静脈産業の役割を担うにふさわしい。一方、頻発する親の子殺しなどの異常事件は、幼児期の自然体験の欠如と相関があるのではないかと疑っている。そのため、教育普及活動の方針に「持続可能性」かかげ、かつて「命の教育」の舞台であった里地、里山、海岸の自然を再現し、子どもたちが「自然への扉を開く」場としての充実を目指している。

また、地域に埋没しがちな地方水族館にグローバリゼーションの流れを導くために、海外の主要水族館と友好提携した。シーラカンス研究プロジェクトの推進もそのもくろみだった。この7年間は、優れた特性を伸ばし、マイナス要因を解消、克服する仕事に明け暮れた。今後も、公共施設としての特性を維持しつつ、高い集客力維持しつつ、健全経営を目指す。7周年を迎えたアクアマリンふくしまの新たな挑戦である。

手狭なタッチプール 手狭なタッチプール

マイナス要因の一つは、埠頭立地である。埠頭に沿った細長い建物の形状から、外構の面積が限られているので将来の計画を描きにくいことであった。展示の面では、生命の進化から始まるプロローグの重厚さに比較し、エピローグにあたるタッチプールが「ネコの額」の規模であることなどがあげられる。

イルカやアシカのショーが無いことは、マイナス要因ととらえられがちだ。今でもお客様からクレームのつくのが「ショーが無い水族館」だが、私はむしろプラス要因であると思っている。なぜなら、利用者の関心がショータイムに集中しすぎ、いかに良い展示でも人々の関心をつなぎとめることが難しいからだ。もう一つの「展示」ともいうべきレストランやミュージアムショップの便益施設は、規模も配置も経営戦略も脆弱であった。「ネコの額」タッチプールの拡大と便益施設マイナス要因の克服が懸案だった。

「猫の額」のタッチプールは、建築に付随した水盤にビオトープを開設することによって解決した。「BioBioBioかっぱの里」と命名した。埠頭先端に向かってその外縁に「JubJubひがた」、「PichPichいそ」をつくった。2007年の4月にはそれらを統合拡大し、4,500平方メートル、世界最大級のタッチプール「蛇の目ビーチ」が出現した。

館内では、子ども目線の「いろいろ水族館」、「海とあそぶ」企画をロングランで開催している。これらのキッズ企画は、「蛇の目ビーチ」と一体化して「子ども体験館(仮称)」計画に結びつける計画である。

集客の源泉は、常設展示とシナリオに磨きを掛け、いかに魅力的な企画展示をちりばめるかにかかっていると考えた。企画展示は、全職員がいずれかのプロジェクトチームのメンバーとなるようにして取り組んだ。開館以来の主要企画展示の中で「~」は企画展示を経て定番化または常設となったものである。

<海洋文化系企画展示>「南太平洋のウミサチヒコ、オーストロネシアの海洋文化展示」(2001)、「海の美の発見・浜通り海洋文化展示」( 2001)、「鯨あらわる、よみがえる鯨の文化」(2002)、「あぶくま発見・おもしろフィールドレポート」(2003)、「海を食べる~エービーカーニバル~」 (2003 )、「琉球弧・黒潮の島々を巡る旅ー琉球びんがた水族館」(2006~ )、など。
<環境芸術系企画展示>「海の男の盆栽展」(2000~ )、「芸術家を卵から育てる美術展」(2001~)、「ゆかいなクラゲたち」(2003~)、「小名浜国際環境芸術祭―IEAFO」(2003~)、「日本の釣り文化・サムライの美と技」(2004)、「The KINGYO-日本の美」(2004~)、など。

小名浜国際環境芸術祭 小名浜国際環境芸術祭

スタンダード水族館をめざしてアクアマリンふくしまは開館の年に、米国モントレー湾水族館と友好水族館提携をした。続いて、香港オーシャンパーク、パラオ珊瑚礁センターとも提携を実現し、実質的な交流を行っている。

モントレー水族館との友好館提携式 モントレー水族館との友好館提携式

パラオ珊瑚礁センターとの友好館提携式 パラオ珊瑚礁センターとの友好館提携式

昨年は、スラウエシ島ブオルにてシーラカンス撮影に成功、同島のサムラトランギ大学と協力協定を締結した。さらに、南アフリカ「水生動物種多様性研究所のACEP・アフリカシーラカンス生態系プログラムと協力覚え書きに調印した。アクアマリンふくしまは、アフリカとインドネシアのシーラカンスプログラムと連携して、水の惑星のモンスターの生態解明に共に取り組むことを決意している。

南アフリカ水生生物種多様性研究所との覚書締結式 南アフリカ水生生物種多様性研究所との覚書締結式

マイナス要因の一つであったレストランとミュージアムショップを昨年4月までに大改装した。レストランは従来の食堂から、テイクアウトのCafe& Soupに改装した。レストランの一部に、既存のショップと差別化したアクアマリンアート・セレクトショップを設けた。その結果、レストランもギフトショップも売り上げをのばしている。

利用者数は、表のように、平成16年にプラスに転じ、18年度入館者数は91,2529人、対前年12%ばかりの増加だった。平成18年度の一般会計、海洋文化振興会計、便益施設会計とも黒字であり、アクアマリンふくしまの持続的な経営の展望は明るい。

「熱帯アジアの水辺」生態系モデル展示 「熱帯アジアの水辺」生態系モデル展示

アクアマリンふくしまは、「生態系モデル」展示から、さらに、社会の安全装置の役割を担おうとしている。それは世界スタンダード水族館のあるべき姿である。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝