館長からのメッセージ

蛇の目傘の下での子ども達の自然体験

蛇の目傘は、竹に油紙を張った蛇の目模様の江戸時代以来の古い傘であり、時には浮世絵に描かれている。動物園や水族館は、子ども達が自然への扉を開く、いわばオリエンテーリングの場と言われる。しかし、施設内の小自然から得られる体験が、大自然の下での体験に直接結びつくかというと多少無理があると思っていた。そこで中自然とでもいうべき、屋外タッチプール造成し、「蛇の目ビーチ」と名付けた。

蛇の目ビーチ 蛇の目ビーチ

水族館はおおむね入り口から出口まで一方通行であり、随所にテーマ展示の空間を配置する。水族館の規模の目安には、建築物の延べ床面積や水槽の数や循環水量などがある。もう一つの目安には観覧時間がある。お客様の滞在時間は水族館の魅力とも関係するので、規模と質の両方の目安になる。

滞在時間について検証してみよう。私が建設計画に携わった東京都葛西臨海水族園は、延べ床面積が13、300㎡だった。その70%は様々な環境を維持する設備によって占められるから、観覧面積は約30%に限られる。その面積は13,300×0.3≒4、000㎡である。館内の展示を見ながら歩くと、1、500歩×60㎝(私の歩幅)=900mだった。お客様の平均滞在時間は90分だったから、平均観覧スピードは毎分10mとなる。

アクアマリンふくしまの延べ床面積は13,700㎡、ほぼ葛西と同じだ。開館後、館内を歩測すると1、250歩×60㎝=750mあった。75分水族館だった。入り口の生物進化の展示からエスカレーターで最上階にあがり、スロープを一方通行でおりてくる動線計画であり、あまり途中にあそび空間がない設計だから, 葛西より動線が短かい。

 動線の最後に干満造波装置付きのタッチプールがある。開館してみると,タッチプールは子ども達が鈴なりで大人気だが、いかにも狭い。この水族館には参加型体験型の展示空間が絶対的に不足していると思った。そこで、建物の南側の半円形の水盤は建築を写す水鏡(みずかがみ)だったが、ビオトープをつくることにした。完成した「ビオビオかっぱの里」の園路を歩測すると300歩=180mあった。本館750m+ビオビオ180mで観客動線は930mに伸びた。

ランラン浜での潮干狩り ランラン浜での潮干狩り

あそびの空間ができてお客様の滞在時間は90分ほどに伸びた。次に、その外縁部に、童謡の「ジャノメでおむかえうれしいな、ピチピチ・チャプチャプ、ランランラン」から発想したピチピチ磯、ジャブジャブ干潟をつくった。 さらに,昨年からランラン浜を造成し、あわせて4、500㎡の満月のような「蛇の目ビーチ」が完成した。外縁の海岸植物が繁れば、リング状の「蛇の目」模様になるにちがいない。

「蛇の目ビーチ」は600歩だった。600歩×60㎝=360mを加えて全動線延長は1、300mになった。アクアマリンふくしまは75分から130分水族館に変身したことになる。滞在時間の延長は質的な向上を反映している。半日過ごすお客様も多い。

アクアマリンふくしまは「よしず張りの水族館」を付加して、蛇の目傘の下で、この夏には子ども達が「自然への扉を開く」場となるにちがいない。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝