館長からのメッセージ

企画展「地中海の魚と伝説」

企画展『地中海の魚と伝説』( 会期:2004/7/31~2004/9/27 ) 企画展『地中海の魚と伝説』( 会期:2004/7/31~2004/9/27 )

地中海は狭いジブラルタル海峡で大西洋に繋がる「シーポケット」である。閉鎖環境であるので多くの固有種が進化した。
大半の地中海種には18世紀の偉大な博物学者リンネによって命名されている。

ローマ時代から敷石や壁面に描かれたモザイクの魚を通じて地中海沿岸の人々と海とのつながりの深さがしのばれる。
ブイヤベース、パエリアは地中海の家庭料理でもある。魚介類をふんだんに使う。

ナポリは風光明媚、文化遺産の宝庫である。「ナポリを見て死ね」が諺になった。
サンタルチア海岸に面したナポリ海洋研究所は19世紀につくられた石造りの荘重な建物だ。幾多の海洋学上の研究成果をあげてきた。

研究所の半地下には世界最古の水族館がある。
水槽には巨大な地中海ウツボ、ムラエナ・ヘレナが何十尾も
もつれあっていた。ローマ人が奴隷を処刑するのに、ウツボの池に放り込んだといわれている。シーザーが凱旋したとき6000匹のウツボを供したと伝えられている。ウツボが権力の象徴だったようだ。
またローマ時代には海の魚を飼うことが流行したといわれる。それも、魚が死ぬ間際に色を変えるのを楽しむという残酷なものだった。地中海ではこうした歴史物語にことかかない。

このたび、旧知のナポリ海洋研究所のフレグラ・ベンチベーニャ水族館長のご厚意で、研究所の資料や地中海の魚が届いた。
また、同じく旧知の、東京動物園協会の中川成生氏から地中海のモザイク壁画等の写真を借用した。ここに両氏に感謝の意を表する。