館長からのメッセージ

「ボンサイ」から「オアシス」へ

アクアマリンふくしまの、運営方針はMSNである。何度も登場させているがMは、Microcosm・マイクロコズム・小宇宙。つまり、展示水準を小宇宙の域まで高める。SはSustainability, サスティナビリティ・維持可能性。つまり自然との共生について考える、環境教育方針。 N はNon-Charisma、ノンカリスマ。人気動物のカリスマに依存せず、環境を構成する大多数の普通種を研究の対象にする。

館内案内図 館内案内図

ここでは、Mの方針について吟味してみよう。館内展示はシナリオに従って、図のような構成になっている。4階建て、全館温室仕様です。生物進化をプロローグとして、人々はエスカレーターで最上階に導かれ、スロープを下りながら展示を鑑賞します。「ふくしまの川と沿岸」、「熱帯アジアの水辺」などは、動物も植物も共存する水際の生態系展示になっている。メインテーマの「潮目の海」大水槽は、陽光が差し込み、暖流の黒潮と寒流の親潮の交わる豊穣の海だ。ガラス越しに見る非日常の水中世界は人々を魅了する。

アクアマリンふくしまの館内展示は、建物の中の制約から、自然を縮小、抽象化している。つまり、盆栽や日本庭園の世界と共通の考え方でつくられている。盆栽は、長い年月をかけて理想の自然を鉢の中の実現する、「生きた芸術」作品です。館内の個々の展示のスケールは「潮目の海」の大水槽といえども、盆栽の世界だ。

生物進化からはじまる全館展示のシナリオと、その展示は、完成度の高いものと自認しているが、当初から子どもたちの自然体験の空間となると建築の制約があった。「猫のひたい」のようなタッチプールの体験機能は、企画展示で補完するほかなかった。そこで、戸外にビオトープや、4500平方メートルもある人工磯「蛇の目ビーチ」を作り続け、自然体験の場を外構部に拡張してきた。また、10周年を期に子ども体験館「アクアマリンえっぐ」を付加した。

整備中の庭園 整備中の庭園

環境水族館アクアマリンふくしまとしては、災害を期に、外構部をさらに緑化し海山川の循環をさらに強調したいという願望がある。はからずもクウエート王国からいただいた義捐金を原資として、「福島―クウエート友好記念日本庭園」を建設中だが、さらに、阿武隈山地と鮫川の清流の自然を象徴した「わくわく里山、縄文の里」を構想している。ここでは、館内の「小宇宙」から、大自然へ結びつく、縄文人の生活環境を再現し、新たなM・マイクロコズムの世界となるだろう。完成のあかつきには、水族館の非日常性が薄れ、縄文人の日常空間が出現する。そこでは、小川の雑魚はもとより家禽も家畜も、蛇も昆虫も共存する。2号埠頭は津浪の再来に備えて防潮林(当地では「須賀」という)で囲む。アクアマリンふくしまは、産業港と漁港の間にあって、水族館から「オアシス」に変貌する。新しい水族館の提案だ。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝