館長からのメッセージ

水平水族館の提案

新しい水族館像-垂直から水平へ

動物園は、その展示方針として系統分類順、あるいは動物地理学順に動物を配置して歩んできた。水族館は、動物園内にあって水生生物を受け持つ施設として発達した。ガラスや大型化したアクリルパネル越しに見る水中世界は、その非日常性故に、人々を感動させた。
ダイナミックなイルカやアシカのショーが人気を博している。やがて、水族館は動物園から、独立した施設として発展した。水族館は、動物園から分離した結果、失ったものも少なくない。つまり、人と同じ空気を呼吸するは虫類や鳥類、陸上哺乳動物の展示を失った。
あるいは、それらの展示の比重を減じた。私は、水族館の動物園からの分離は、ケンブリッジセブンアソシエーツがデザインし、1967年、ボストンに開館したニューイングランド水族館が象徴的な事件であった思う。彼らの、ガラスの三角屋根と小さな植物園展示に動物園が象徴されているように思う。水族館建築では、建築家のデザイン力が施設の命運を左右するといっても過言ではない。現代水族館では、水槽が巨大化し、非日常空間が強調される。巨大アクリルパネルによる非日常空間を強調すればするほど、陸上の自然からの懸隔が大きくなって行くのではなかろうか。アクアマリンふくしまは、小名浜港の2号埠頭にある。そして、四層の館内動線はケンブリッジセブンの利点を取り込んでいる。

アクアマリンふくしま外観 アクアマリンふくしま外観

人々はエスカレーターで地質時代から一気に最上階の地域の渓流に導かれる。さらに、シンボルだった三角屋根の温室は、建築全体を覆う温室になっている。しかし、依然として、私は、アクアマリンふくしまは観覧者の視点からはアンバランスな施設であると認識していた。そこで、第一段階として建築を映す水鏡だった水盤をビオトープにした。続いて、埠頭先端部近くまで4600m2の大タッチプールを設けた。建物展示と屋外展示とのバランスがきわめて良くなった。

ビオトープと大タッチプール ビオトープと大タッチプール

館内動線長と略同長の館外動線が誕生した。新たな計画では、本館へのアプローチの約2ヘクタールの空間に、海山川の循環を象徴した「わくわく里山」を数年内に造成する。これは、国がすすめる将来の激甚災害時の海路からの物資補給計画―「港オアシス」計画と良くマッチしていると信じる。アクアマリンふくしまは、物流の港と漁業の港の狭間にあって文字通り人々の憩いの場、港オアシスに変貌する。

里山イメージ 里山イメージ

ここでは、縄文時代に遡る人と自然のバランスのとれた生活の場を再現する。「わくわく里山」を付加したアクアマリンふくしまは既に水族館の範疇にない。垂直なガラス越しに水中世界を見る水族館を「垂直水族館」とよぶことにする。一方、あぶくまの山地から流れ下る細流と水田の世界は、いわば「水平水族館」とよぶことができる。動物園と水族館の垣根が低くなるであろうとの予測する人々がいる。しかし、水族館は動物園から自立した歴史があるから、低い垣根は動物園と水族館の再融合とはならないはずである。水平水族館では家禽も家畜も共存する。水平水族館は、動物園と水族館の非日常性を日常にもどす契機となるであろう。垂直水族館と水平水族館との組み合わせは、域内保全を基本とした域内の生物展示が前提となる。それは、地域の自然を総合的に展示し体験させる、いわば日常水族館である。それには従来の動物園や水族館の名前は付けられない。名称は「アクアマリン縄文の里」とでもしようか。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝