館長からのメッセージ

職員提案による企画の立案

魚と歌舞伎展 魚と歌舞伎展

私は、企画展示の年間計画を作る際に全職員(臨時職員もアルバイト職員にも)に企画の提案を呼びかけてきた。もちろん私も提案する。
昨年は、夏の終わりに数年間の企画を決めるための提案を呼びかけた。合わせて90件に余る提案があった。筋が良いと思われる提案も、あまり良くない提案も、ジャンルごとに整理するのは私の仕事だ。

筆者も十分に歳をとったので、世代を超えた感覚を理解しなければならず、なかなか大変な仕事でもあり、楽しみな作業でもある。大切なのは、提案を自分の好みで門前払しないことだ。荒整理した提案を提案者名を伏せて幹部会(飼育課長がそろっている)にかける。
類型は次の13ばかりに分かれた。

・経営戦略にかかわる提案
・海洋学一般
・シーラカンス
・子ども水族館
・文学系
・海洋文化系
・海を食べる
 ・蛇の目ビーチ活用
・よみがえれ小名浜漁港シリーズ
・環境水族館系
・環境芸術系
・セレクトショップ
・10周年記念事業など。
 

これらを、時代の背景への適合性、実現可能性の視点で検討し、企画展示等3カ年計画(2009-2012)に反映させた。タイトルや記述は、できるだけ原案を生かすことが重要だ。例えば、魚と歌舞伎展の提案を含む文学系の10提案はつぎのようなものだった。
1.妖怪納涼水族館:お化け屋敷で、妖怪系生物展示。
2.歌舞伎水族館:魚の歌舞伎役者や衣装に現れる魚などの展示。
3.幻獣標本展:大百科辞典から借用。
4.ぬいぐるみ水族館;ジオラマ風に展示する。
5.物語の中の生き物たち:児童文学、絵本をあつめ、生体展示も行う。
6.絵本と水族館:絵本に登場する魚と展示。
7.魚へん漢字講座:漢字の由来と実物展示。
8.魚と伝承:神話、おとぎ話に登場する水生生物を展示。
9.薪能舞台をつくる:夏の夜に蛇の目ビーチに能舞台を仮設。

魚と歌舞伎展 魚と歌舞伎展

飼育の幹部会では、案外面白いと思ったテーマが選からもれることがあった。サイエンスに偏る傾向があるからである。この、歌舞伎と魚は、選から漏れていた。一般的には、今日の若い世代は日本の伝統文化に疎いようだ。この職員提案を通じて、歌舞伎など見たこともない者が特に若い世代では、かなり多いことがわかった。
このことは、魚と歌舞伎の提案を企画展示として優先的に採用する有力な理由となった。
「魚と歌舞伎」展は今年の1月の末からはじめ、4月5日まで開催していたが、子ども達に好評につき5月まで延長した。以下は、筆者の「魚と歌舞伎」展の前書きである。

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水族館の水槽は、舞台装置でもある。そして役者は魚達だ。
歌舞伎の舞台は、廻り舞台あり、花道ありで複雑である。
水槽の舞台も、魚の生息環境を再現するという意味で、水槽ごとに違う舞台づくりが必要だ。
飼育職員は舞台装置づくりに苦労する。
さて、歌舞伎役者もその役どころによって独特な化粧をしている。
魚にも歌舞伎のクマドリ由来のクマドリという極彩色の魚がいる。
お化粧の多彩さではサンゴ礁の魚と歌舞伎役者は良い勝負だ。
アクアマリンふくしまの水槽から選りすぐりの魚の歌舞伎役者を大集合させた。
さあ、皆さんアクアマリン大歌舞伎をお楽しみください。
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大きな映像モニターを置いて音声で歌舞伎舞台を紹介している。小さな子どもは、極彩色にクマドリ化粧した役者が大立ち回りするのを、目を点にして凝視している。アクアマリンふくしまの、魚と歌舞伎展が、本物の歌舞伎鑑賞につながることを期待している。

企画展会場にて~歌舞伎の映像に魅入る子供~ 企画展会場にて~歌舞伎の映像に魅入る子供~

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝