館長からのメッセージ

禅とアクアマリンふくしま 斉藤正氏写真展、「ZEN~禅と仏像の世界~」の開催にあたり

旧知の禅僧、埼玉県秩父市郊外の禅寺、臨済宗金仙寺の住職、斉籐正さんが撮りためた仏像の写真25点の写真展、「ZEN~禅と仏像の世界~」が、10月6日から11月5日の会期で開催しました。斉籐正さんは、国画会の写真部門の審査員でもあります。このたび、表題のような斉籐さんの写真展が実現したことは、私にとって望外の喜びです。

仏像は、538年の仏教伝来とともに日本にもたらされ、埴輪時代以降、偶像崇拝のなかった日本人に、神秘的な驚きを与えるに十分なものでした。仏像の美しさは、古来、日本人の心を惹きつけてきました。仏像のある風景をとおして禅宗の世界を描いた斉籐正さんの写真は、やさしさのなかにも自然と対峙する禅宗の厳しさを表現しているように思われます。

ZEN~禅と仏像の世界~

アクアマリンふくしまの環境展示は、自然の再現、自然の抽象化の作業をへて、理想の自然の創出を目指しています。自然の抽象化をつきつめると、日本庭園の「枯山水」になります。枯山水は禅僧の瞑想の場です。人々がその中に安らぎを見出すような展示は、禅宗の美意識と共通です。アクアマリンふくしまの環境展示と、斉籐さんの写真に共通の美をみいだしていただければ幸いです。以下に斉藤正さんのコメントを付します。

 

「ZEN ~禅と仏像の世界~ 」斉藤正氏のメッセージ

禅とは、瞑想して精神集中をはかり、迷いの心を捨てて無念無想の境地に達する、仏教における修行のひとつと解釈されるが、日常生活の実践の中に悟りをひらく道があるという視点から、禅は宗教を越えて、ライフスタイルのひとつとして注目されるとともに、昨今では欧米でも高い支持を得ている。自ら修行の世界に身をおきつつ、半世紀にわたって禅の心を撮り続けてきた。

禅に関して

仏像の起源はガンダーラ(パキスタン)ともマトゥラー(インド北部)ともいわれる。のちにシルクロードを経て中国に伝わり、日本に渡ったのは6世紀ごろである。一般に如来・菩薩・明王・天・羅漢をすべて仏像と呼ぶが、本来は悟りを開いた者すなわち如来だけが仏像である。手は釈迦の身振りが体系化され、禅定印、降魔印、説法印といった印相を結ぶ。その表情と美しさに惹き込まれ、今もレンズを通して御仏との対話を続けている。

~浄土~

浄土とは、阿弥陀仏の西方極楽浄土のように、仏のすむ清浄な世界をさすが、特定の場所ではなく、人々が心を鎮めたときに開ける幸せに満ちた精神的世界のこととされる。人々に安らぎを与える真の自然環境との融合を求め続けるアクアマリンふくしまの精神は、浄土の概念と通ずるのかもしれない。

斉藤 正(さいとう ただし)氏経歴

斉藤 正(さいとう ただし)氏経歴
昭和3年生まれ 秩父市在住
臨済宗建長寺派 金仙寺住職
国画会写真部会員 秩父写友会長
1960年 国画会富士賞受賞
1964年 国画賞受賞 会友推挙
1968年 国画会会友優作賞受賞
1972年 国画会会友優作賞受賞
1973年 国画会会員推挙
1988年 国際写真サロン入選
2002年 藍綬褒章受章