館長からのメッセージ

シーラカンスの謎に迫る インドネシア、マナドにおけるシーラカンス生息地調査 アクアマリンふくしま・シーラカンス調査隊報告

マナドシーラカンス

アクアマリンふくしま、ふくしま海洋科学館では、2001年に、シーラカンスをカリスマ種から引きずりおろし、普通種として生物学的研究の対象とするために、長期計画シーラカンスプロジェクトを立ち上げた。
プロジェクトの一環として、この度、インドネシアの科学技術院とスラウエシ島マナドのサムラトランギ大学の協力を得て、AMFのインドネシアシーラカンスの調査が実現した。ここでは、インドネシアシーラカンスを東アフリカのシーラカンスと区別して、英名でマナドシーラカンス、東アフリカ種をコモロシーラカンスとよぶことを提唱する。

調査隊は、アクアマリンふくしま側は、シーラカンスプロジェクトチーム、インドネシア側は、インドネシア科学技術院LIPIのカシム・ムーサ博士ほか、現地マナドのサムラトランギ大学水産海洋学部長マセンギ氏ほか、によって構成されている。
プロジェクトチームの構成は、高深度潜水チームと、自走式水中カメラROVのオペレーションチームからなる。高深度潜水チームはアクアマリンから2名を加えた米国フロリダ州Dynasty社のフォレストヤングを含む4名の計6名であった。自走式水中カメラROVのオペレーションにはアクアマリンの2名とインドネシアのクルーがあたった。
アドバイザーとしてマナドシーラカンスの第1発見者マークアードマン氏、深海魚類学者、望月賢二氏、サンゴ礁の生態学者、岡地賢氏、モントレー湾水族館からチャーレス・ファーウエル氏らが参加した。

調査期間は2005年、4月17日から4月30日の間の2週間であった。調査場所は、スラウエシ島、北スラウエシ州の州都、マナドの沖合に浮かぶマナドツア、ブナケン、シラデン、モンテハゲなどの島嶼海域であった。調査は、マークアードマン博士の最初のシーラカンス捕獲情報をもとに、マナドツア島の熔岩クラックから始められ、次第に調査地点を拡大して行った。
高深度潜水チームは調査期間中、トライミックスガスと最新式のリブリーザー(循環式潜水器具)によって、マナドツア島、ブナケン島などの沖合6地点の水深70mから150mの潜水を試みた。ROVチームは、一日に平均6,7スポット、計83スポットにROVを入れ、水深300mまでのクラックからクラックへとマナドシーラカンスを探索した。
調査の後半は、夜行性のシーラカンスの習性を考慮し、深夜に及ぶ夜間調査に切り替えた。潜水チームはシーラカンス探索のかたわら、ハンドネットによって生物採集も行った。調査海域の表面水温は28℃であった。水深100mでも20℃と高かった。
コモロシーラカンスの生息適水温とされる17,18℃以下の水深は150m以深であった。水深250m、水温14,15℃の海底はROVの潜行能力限界に近く、その深さで潮流が早い時間帯にはROVは操作不能であった。

シーラカンスは30㎝ほどの稚魚を出産する胎生魚である。稚魚が未発見であることから、一般のダイバーが潜らない、水深50m以深から100m付近に生息するという推定のもとに、稚魚の生息場所の調査も丹念に行った。
結果的にはマナドシーラカンスは、高深度潜水による目視によっても、ROVによっても姿を捕らえることは出来なかった。高深度潜水及びROV調査によって、周辺海域の海底地形、水温情報、生息生物の膨大な資料が得られた。
採集標本は、研究材料としてインドネシア科学技術院の許可の下に持ち帰り、専門家による研究に提供される予定である。今後、これらの資料を解析し、プロジェクトチームは、その結果を次の調査のステップにしていく予定である。

最後に、調査団を代表して、筆者は、この度の調査にあたり、インドネシア科学技術院LIPIの関係者、サムラトランギ大学の皆様にその真摯な協力に感謝致します。
また、プロジェクトチームのリーダーとして、昼夜をわかたず操業したROVチームと、フォレストヤング率いる勇敢な高深度潜水チームの活動に対して感謝と敬意を表明します。すべてを誇りに思います。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝