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竪琴のような形の珍種「コトクラゲ」に関する論文発表

2018年から2022年にアクアマリンふくしまと新潟市水族館マリンピア日本海で実施した共同調査におきまして、コトクラゲが日本海側(日本領海内)で初めて発見されました。このことに関して論文が掲載されました。

  • 2022年の共同調査の様子
  • 調査中にROVで撮影したコトクラゲ

掲載雑誌

日本生物地理学会会報第78巻(2023年12月20日発刊)

掲載論文

日本海初記録?新潟県佐渡海峡から得られたコトクラゲLyrocteis imperatoris

著者

山内信弥¹*・幸塚久典²・石岡勇剛³・石澤佑紀³・石井輪太郎¹・新田 誠³
1* 公益財団法人ふくしま海洋科学館(アクアマリンふくしま)
2東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所
3新潟市水族館マリンピア日本海

概要

コトクラゲは国内では東京湾口部~沖縄海域の太平洋側の幾つかの地点で生息が確認されていますが、日本海側(日本領海内)での発見は初めてとなります。また新潟県沖で発見されたことから生息域の北限記録も更新しました。論文内では2018年、2019年、2022年にアクアマリンふくしまとマリンピア日本海の共同調査で発見された個体について記載されていますが、2023年も発見及び採集に成功しています。現在当館の「海・生命の進化」コーナーで太平洋側の個体と一緒に展示しながら観察を続けています。この発見により、太平洋側と同様に日本海側にも広く生息している可能性が出てきました。今後も調査を継続し、本種の生息海域を明らかにしていきたいと思います。

①調査方法
採集装置を付属したROV(遠隔操作型無人探査機:広和株式会社製)を用い水深100-200mを中心に調査

②発見の経緯
アクアマリンふくしま・マリンピア日本海との共同調査「アカムツ生態調査」で発見
※論文執筆にあたって無脊椎動物の分類研究に精通した幸塚氏(東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所)に参加要請

③論文要約
2022年6月28日、新潟県佐渡海峡沖合のROV(遠隔操作型無人探査機)調査により水深134.5 mと139.9 mから有櫛動物門に属するコトクラゲLyrocteis imperatoris Komai 1941を2個体採集した。これまでに本種は相模湾、駿河湾、鹿児島、沖縄本島さらに韓国、パラオ、ポンペイ、フィリピンの周辺海域からの報告に限られていた。今回の採集標本は日本海側では国内初記録であるとともに、分布域の北限更新記録でもある。本研究では、2018年9月7日と2019年8月26日に同海域で確認された本種の記録映像と今回の採集標本に基づき、詳細な外部形態と採集時の状況、飼育環境について記載した。

コトクラゲとは

1941年に昭和天皇が相模湾沖で発見され、駒井博士が形態が琴のような形からコトクラゲと名付けました。本種は潮の流れの速い場所で櫛の歯状の2本の触手を長く伸ばし、触手に粘着性物質を分泌することによって海中の動物プランクトンを捕獲します。体色は橙、黄色、白、白地に赤色の水玉模様などバリエーションがあります。水深80m以深に生息し、体が非常に軟らかいため生きた姿を見ることができるのは水族館職員でも稀です。

展示体につい

論文に記載されている個体ではありませんが、翌年2023年に同海域で採集したコトクラゲを展示しています。

展示開始日:2023年7月28日(金)
展示場所:アクアマリンふくしま 本館1階 「海・生命の進化」コーナー
採集場所:新潟県佐渡海峡沖 水深137.8m
展示個体数:1個体
大きさ:全長約14㎝

※同じ水槽に駿河湾から採集(2023年11月22日)したコトクラゲ1個体も展示しています。コトクラゲとしては計2個体展示中です。



生き物紹介 コトクラゲ