館長からのメッセージ

弁財天うなぎプロジェクト

ウナギの葉形幼生 ウナギの葉形幼生

私たちは美味しい蒲焼きを食べ続けられるだろうか。
日本人は世界一のウナギの消費者だ。年間20万トン消費、一人10尾も食べている。その大部分を中国台湾からの輸入に依存している。
ウナギの生態にまつわる謎は、地球環境問題の縮図ともいわれる。ウナギは、生息する河川環境から、水惑星を産卵場にむけて大回遊する。長い回遊経路は、水惑星の環境と密接な関係がある。

沼の内弁財天と賢沼 沼の内弁財天と賢沼

年は正月早々大ウナギの天然記念物で知られる賢沼(かしこぬま)のある弁財天賢沼(けんしょうじ)寺に住職を訪ねた。住職に新プロジェクト名に水辺の環境保全のシンボルとして弁財天を使うことについてご了承をいただいた。中年以上の方々に伺うと、賢沼にはこの間までオオウナギが確かにいたという。子どもの頃の遠足でオオウナギがイワシの餌に集まるのを見たという。その姿が消えて久しい。

沼と弁財天川を結ぶ小堀が側溝になっている。川との間に2mばかり段差があるためシラスウナギは上れない。弁天川も側溝と同じ三面張りだ。
蒲焼きになるウナギの生態はシーラカンスに劣らず謎に包まれている。ウナギは川で10年ばかり暮らして海に下り、遠くマリアナ海域まで産卵回遊するらしい。
しかし、産卵回遊の全容は明らかでない。孵化稚魚は透明な葉形幼生、レプトケファルス期を経て1年がかりで黒潮に乗って北上する。日本列島へは、秋から早春に透明なシラスウナギとなって川に戻ってくる。この稚魚を採集してウナギ養殖の種苗にする。人工授精によって採卵し、稚魚に育てる技術はいまだに実用化できていない。

弁天川と沼をつなぐ暗渠 弁天川と沼をつなぐ暗渠

日本列島に回遊するシラスウナギが激減したので、ヨーロッパウナギの稚魚が大量に輸入されるようになった。中国でも台湾でも日本への輸出するためにヨーロッパウナギを種苗にした養殖が盛んになった。ニホンウナギとヨーロッパウナギは形態的によく似ているので、区別せずに養殖されてきた。養殖業者は冬採集したシラスウナギを温室で促成栽培し土用の頃までに200gほどの蒲焼きサイズに育て上げる。中国や台湾産の養殖ウナギは飼育段階で病気の予防に禁止薬剤マラカイトグリーンを使っていることが問題となった。

近年ヨーロッパウナギの稚魚も減少してきたため、EC諸国からの輸出が規制されるようになった。養殖池からはウナギはよく脱走する。逃げたヨーロッパウナギの消息はどうなったのだろうか。一方、漁協は河川への放流義務がある。時により安いヨーロッパウナギのシラスウナギが放流されてきたという。
ウナギはまさに「生きた」地球環境問題である。アクアマリンふくしまは阿武隈山地に産する希少な淡水生物の生息調査を行ってきた。 昨年、暮れも押し詰まって、ウナギ調査研究プロジェクトを立ち上げることにした。
これはシーラカンスプロジェクトと対になる基幹プロジェクトとして位置づけている。
アドバイザーとして旧友の岡英夫氏を依頼した。彼は、日本のウナギ養殖のメッカ静岡県浜松の水産試験場長を勤めた。また、名古屋港水族館の副館長も勤めた。

また、マリアナ海域に産卵場を確認した、日本のウナギ研究の第一人者、東大海洋研究所の塚本教授にもお願いした。  弁財天ウナギプロジェクトは、地域の生息域内保全プロジェクトとして位置づけている。アクアマリンふくしまがシーラカンスとならんで長期調査研究計画として取り組む。調査対象は、ウナギばかりでなく阿武隈域内のイワナなどのサケ科魚類、ゼニタナゴなどのコイ科希少淡水魚類、両生類のカエルやサンショウウオの生息調査も含められる。
これは、例えば土砂に埋まった砂防ダムや三面張り河川などの環境を改善し生息環境をとりもどす運動でもある。阿武隈の中小河川に出没するアクアマリンふくしまの調査隊への皆様のご協力をお願いします。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝