最新の生き物情報

“生きた化石”スポッテッドラットフィッシュの繁殖のなぞに迫る研究成果発表

水族館生まれの繁殖個体も多数展示中!

アクアマリンふくしまでは、「海・生命の進化」コーナーで生きた化石「スポッテッドラットフィッシュ」を展示しています。飼育下において様々な繁殖生態が判明し、動物園水族館雑誌に掲載されましたのでお知らせします。

スポッテッドラットフィッシュ(過去の展示個体)

掲載誌

動物園水族館雑誌第68巻1号(日本動物園水族館協会(JAZA)が発行している専門的な学術・機関誌です。繁殖の記録、病気の治療報告、施設の運営論など、JAZAに加盟する全国の動物園水族館の飼育員や研究者が論文や報告を寄稿する学術雑誌です。)

公表日

2026年6月

論文題名

飼育下におけるスポッテッドラットフィッシュ Hydrolaguscolliei の産卵周期と孵化について
The Spotted Ratfish‘s egg-laying cycle and hatching under human care

経緯

当館では、「海・生命の進化」コーナーにおいて、世界各地で見つかった海の生き物の化石と、太古の昔から姿や形がほとんど変わっていないことから「生きた化石」と呼ばれる生き物を展示しています。このコーナーで展示しているギンザメ目に属するスポッテッドラットフィッシュも、生きた化石のひとつで、数億年前から大きく姿を変えていない特徴的な形態を持つ軟骨魚類です。
当館では開館以来20年にわたり飼育展示を続けてきましたが、産卵は確認されるものの、これまで得られた卵はすべて無精卵で、孵化・育成には至っていませんでした。しかし、2020年に搬入された個体から得られた卵が受精卵であることが確認され、初めて孵化個体の育成に取り組む機会を得ました。
現在では15個体以上の繁殖個体を展示しています。
今回の論文では、その飼育・繁殖の過程で得られた知見をまとめました。先行研究はいくつかありますが、本研究ではこれまでと異なる結果や、新たな知見も明らかになっています。

  • 産卵の様子(矢印は卵を示している)
  • 卵(長さ約14㎝)
  • 幼魚(孵化後1日目)

特徴、 分かったこと、期待されること

  • これまでの先行研究では、本種は一年を通して産卵するとされていましたが、本研究では、産卵を行う時期と産卵をしない休止期を繰り返していることが確認されました。この違いが個体差によるものなのか、本来の繁殖生態によるものなのかは今後も検証が必要ですが、自然界で知られている本種の産卵時期と比較すると、本研究で確認された周期に近い可能性が示唆されました。
  • 卵を管理する水温を先行研究より数℃高く設定したことで、孵化までの期間を約100日短縮することができました。この結果は、長期間にわたる卵管理の効率化につながるだけでなく、先行研究より高い孵化率が得られたことから、孵化率向上にも役立っている可能性があります。
  • 孵化個体の性比(メスとオスの割合)を調査したところ、ほぼ1:1であることがわかりました。卵生の軟骨魚類の子の性比調査はほとんどなく、特にギンザメ目では初めて明らかになりました。
  • 本種の卵は卵殻が薄いため、赤外線ライトを用いた撮影によって、卵の中にいる胎仔の様子を観察できることが分かりました。この方法は卵に直接触れない「非接触型」の観察方法であり、刺激によって早く孵化してしまう危険のある孵化直前の卵の観察に有効でした(刺激によって早く孵化した個体は、数日で死亡してしまうことがあります)。
  • 赤外線ライトによる長時間撮影から、孵化は20時〜翌2時の夜間に行われることが確認されました。また、孵化直前の卵内での胎仔の行動も観察することができました。これらの知見は、孵化に備えた育成管理の準備を行ううえで非常に役立つ情報になると考えられます。

今後の展望について

本研究により、本種の飼育下における産卵周期、孵化までの日数、孵化前の行動、孵化時刻、性比に関する詳細なデータを蓄積することができました。特に、これまで知られていなかった孵化前行動や孵化時刻に関する新たな知見は、現在も継続している繁殖個体の育成管理に活用できる可能性があります。
今後は、本研究以降の課題である育成個体の生存率向上についても、引き続き取り組んでいきたいと考えています。

展示中の若魚