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幻の魚「カンテンゲンゲ」を日本初展示

奇跡!深海魚が食べた卵から稚魚誕生!

「ふくしまの海~大陸棚への道~」コーナーにおいて、カンテンゲンゲの展示を始めました。
アクアマリンふくしまは今後も未知の深海生物の生態にせまります。

カンテンゲンゲ

カンテンゲンゲ

採集

2021年6月11日
北海道東沖 調査船「若鷹丸」で採集 水深550m付近
*若鷹丸調査は 「令和3年度水産資源調査・評価推進事業(水産庁委託)」により実施

採集協力

国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター

展示の経緯

国立研究開発法人水産研究・教育機構の漁業調査船「若鷹丸」に当館職員が乗船し、調査に同行した際、採集されたコンゴウアナゴが直径1㎝ほどの大型の卵を吐き出したことを確認しました。

カンテンゲンゲの卵

当初は何の卵かはわかりませんでしたが、この卵を水族館に持ち帰り、生まれた稚魚を半年間育成したところ、成長するに伴い外見上の特徴が現れたこと、また遺伝子解析の結果からカンテンゲンゲであることがわかりました。
ゲンゲの仲間は、リュウグウノツカイのような他の深海生物と比べると派手さはなくあまり有名ではありませんが、深海に多く生息する深海を代表する魚の仲間のひとつです。また食用として利用されることもありますが、生きている姿を見られる事はほとんどなく、どのような卵を産むかを含め生態はわかっていませんでした。
今回、深海で捕食された卵が奇跡的に消化されずに生きていたことから、日本初の展示を実現することができました。この貴重な事例を謎多き深海魚ゲンゲの生態解明につなげるため、今後研究機関と連携しながら学術誌への投稿を目指します。

カンテンゲンゲ

  • カンテンゲンゲ
  • ゲンゲ科
  • 学名Bothrocara tanakae 
  • 英名Jelly eelpout 

北海道オホーツク海沖、北海道~千葉県銚子の太平洋沖、秋田県、新潟県(佐渡含む)の水深200-900mに生息しています。
ゲンゲの仲間は寒天質の柔らかい肉質をしており、「下(げ)の魚=ゲンゲ」としてあまり食用に利用されていませんでした。しかし、近年食味が良いと見直され、鍋物やから揚げなどで利用され始めるようになりましたが、鮮度が落ちやすいため、「幻(ゲン)の魚=ゲンゲ」という意味にもとられるようになりました。