ユーラシアカワウソのドナウの治療について(ご報告)

当館では、日本ですでに絶滅したとされるニホンカワウソがかつてどのように生息していたかを伝えるため、最も近い種類であるユーラシアカワウソを展示しています。ドナウはこの展示を開始した2010年にドイツのミュンヘン動物園からやってきました。今年2月、このドナウに悪性腫瘍がみつかったため、3月からバックヤードへ移動して治療を行っています。治療の経緯と最近のドナウの様子をお知らせいたします。

2月1日、給餌中にドナウの右前肢が腫れていることに気付きました。(写真①)感染症を疑い抗生物質を投与しましたが変化がなく、レントゲン撮影、血液検査なども行いましたが、この段階では原因は特定できませんでした。4月に仙台の動物病院に行きCT撮影と細胞の病理検査を実施しました。その結果、悪性腫瘍であることが分かりました。いわゆる「ガン」です。

 

ドナウ写真①

写真① 右前肢が腫れているのを確認

この時点では転移はみられておらず、患部の脚を切断すれば治癒が見込める状態でした。しかし、カワウソにおける断脚(だんきゃく)はほとんど例がありません。犬や猫のように3本脚で歩行が可能なのか、ドナウはそれを望んでいるのか、非常に悩み、獣医師と担当者チームで話し合いを重ねました。その結果、断脚はリスクも伴うが、腫瘍による痛みを取り除く最も効果的な方法であること、近い種類であるカナダカワウソ、フェレットなどで断脚の事例があったこと、何よりこの病気からドナウの命を救える唯一の方法ということで、断脚を行う方針となりました。

しかし、手術へ向け準備を進めていた矢先、ドナウが今度は右後肢をひきずって歩くようになりました。CTを撮影した際に脊椎の一部が変形する「変形性脊椎症」を疑う所見があり、それが神経を圧迫しているものと考えられました。右後肢が不自由な状態で、右前肢を切断することはできません。手術は一時延期となり、右後肢の治療にあたりました。鎮痛消炎剤を投与したところ、2週間後には右後肢をかばっているものの正常に近い状態で歩行できるようになりました。この時期のドナウは、鼻血が止まらなくなったり、薬の副作用で下痢や嘔吐をくりかえすといった辛い日々が続いていましたが、ここ最近は状態が落ち着いています。

現在は、右後肢の治療を続けながら、右前肢の悪性腫瘍に対しては、免疫療法や抗腫瘍薬の投与といった治療を行っています。苦い薬も、定期的な注射も、「にゃあにゃあ」と文句を言いながらも頑張ってくれているドナウ。また広い展示場に戻れるよう、獣医師、担当者ともども、ドナウをささえていきたいと思います。

2021年6月15日

 

写真②

写真② 餌が食べられず皮下輸液を行う様子

写真③

写真③ 少し痩せたが、表情の豊かさは変わらず

 

個体情報

個 体 名

ドナウ 

性別

オス

生年月日

2008年6月6日(ドイツ・ミュンヘン動物園)

来 館 日

2010年10月6日

ドナウについて

アクアマリンふくしまで最も長く暮らすカワウソです。 今までに国内最多の合計9回の繁殖に成功しており、メスのまろんとその 子どもたちに囲まれて暮らしていました。