お知らせ

いわきサンマリーナに出現する稚魚の生息についての調査結果を公表

いわきサンマリーナ

いわきサンマリーナのアマモ場調査

背景

いわきサンマリーナは、クルーザーやモーターボートの係留港でしたが、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受け、現在は、海上遊歩道や釣り桟橋などの一部を除き立ち入りができなくなっています。現在湾内は、アマモやガラモなどの海草が多く分布する砂浜海岸となっています。  
これまでの研究で、砂浜海岸は、稚魚の成育場としての機能(餌場や大型の捕食者からのシェルターとしての役割など)をもつ事が明らかになっています。しかし、福島県では今まで砂浜海岸における稚魚の生息についての調査は実施記録がなく、県内の稚魚の生息実態は明らかになっていませんでした。  
福島県沖は親潮と黒潮が交わる潮目の海域であり、2つの海流の影響を受けるため、独自の生態系や稚魚の分布がみられることが予測されます。そこで当館では、当該水域を利用する種の解明を目的とし、福島県南部のいわきサンマリーナの砂浜海岸において稚魚の生息についての調査を2017年から毎月1回実施しています。今回は、2017年4月~2018年3月までの1年間分のデータを、論文としてまとめました。

 

造成前サンマリーナ

いわきサンマリーナ


 論文名

「福島県南部の砂浜域砕波帯に出現する仔稚魚」  日本生物地理学会 会誌 75巻41-46 2020年12月20日公表

共同研究:北里大学海洋生命科学部 朝日田 卓教授、片寄 剛博士

結果

2017年度の調査でアユやクサフグ、シロメバル、クロダイ、イシカワシラウオなど合計33種1869個体の稚魚を確認しました。  
また東北海域で生息域外種のオニカマス、クエ、フエダイの稚魚の出現が記録されたのは初めてです。これらの稚魚は黒潮にのって福島県沖までやってきたと考えられます。

 

調査で見つかった稚魚(ヤマトカマス)

調査で見つかった稚魚(ヤマトカマス)

 

担当者コメント

今回福島県で初めて調査を行った結果、いわきサンマリーナには33種1869個体の稚魚が出現することがわかりました。また、 2018年度以降も継続して調査を行っており、さらに多くの種類の稚魚が出現することが判明しています。  
海上遊歩道や釣り桟橋もありいわき市民の憩いの場となっているサンマリーナですが、アマモやガラモなどの藻類が多く、稚魚にとっては大型捕食者から見つかりづらく豊富に餌があって生息しやすい場所、いわば「海の保育園」のような役割を果たしています。また、地球温暖化の影響で水温があがり、普段南の地域に生息する魚が北上してきている可能性もあります。
今後も調査を継続し、砂浜海岸が魚類の成育場として重要である事を、環境教育等に役立てたいと思います。 
(わくわく里山・縄文の里チーム 主任 森俊彰)