深場の生物の生存率をあげる「水生生物収容装置」飼育員が特許を取得
アクアマリンふくしまでは、当館飼育員が開発した技術が特許として登録されました。
水生生物収容装置
特許取得の背景
地球の70%は海洋ですが、特に深海は未知の領域が多く、ほとんど知られていないといってもよいくらいです。深い海で独自の進化を遂げた生物を知ることは、生命を理解し人と地球の未来を考えるうえでとても大事なことです。
しかし、深海生物は大気圧に移動させると、減圧症や温度変化などよって目や内臓が飛び出たり、内臓が損傷したりと、生きた状態で捕獲するのは難しいことが課題でした。それに対して今まで開発された水中の生物を収容する装置は以下のような問題点がありました。
①装置が大型
装置が大きいと船に載せられないか、載せられる数に限りがあります。もし持っている収容容器が少ないと、加圧した容器に生き物を入れている状態で、さらに貴重な生物が採れた時、収容するために容器を空けた瞬間に、最初に入れている生物は大気圧に再びさらされるため、死んでしまう可能性があります。どちらを生かすべきかというジレンマが生じます。
また、大型であるために陸上の施設にしか設置できない場合、深場の環境から加圧施設までの移動の間に症状が悪化します。人間のダイバーにおける減圧症に対する治療においても、いかに早く再加圧するかが、治療の成功を左右します。
②機構が複雑
機構が複雑だと、揺れる船での操作が難しくなります。船酔いの状態ではさらに困難になります。
③高価である
部品が多く高価であると、資金のある研究機関しか使えず、壊れることが怖くて使えないということに繋がります。
今回の発明のポイント
手動で加圧可能でコンパクトです。いち早く加圧治療を行うため、治療効果や生存率があがります。この装置により、生物への負担を減らし、海洋生態や環境の解明が進み、地球環境の保全につながることが期待できます。
特許概要
発明の名称:水中生物収容装置(特許第7689153号)
発明者:吉村 光太郎(アクアマリンふくしま 飼育員)
※詳細は知財ポータルサイト IP Force https://ipforce.jp/patent-jp-P_B1-7689153、
抜粋はJ-GLOBALサイト https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202503015142205570